兵庫県の注文住宅建築設計事務所 松尾設計室のブログ

「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」設計事務所です。

どの業界でも同じ悪循環の構図が繰り広げられている・・・
もともと私は建築の中でも熱環境が専門の人間です。

しかし、ここ数年、防蟻、耐久性、という分野の
トップメーカー数社からコンサルティングを依頼されるようになり
熱環境以外の分野の専門知識を本当にたくさん得ることが出来ました。
その中で「どの業界も同じだな・・・」
と悪い意味で同様に感じる点があります。

それは次のようなことです。

明らかに改善する方法を発見した。
もしくは
現状に明らかに問題点がある
みたいなことを発見した非常に素晴らしい
教授、企業がいたとします・・・

そういった方々がそれを次の基準改訂に盛り込もうと
すると、ほぼ間違いなく既存のロビー団体から横槍が入って
結局「今までのままでいいじゃないか」というような感じで
ひねりつぶされてしまう・・・という現実です。

その結果、その業界の大多数の業者は現状維持と問題発覚の
延期を図ることができ、その他大勢の国民と国全体は損失を
こうむります・・・

さらに悪い事に住宅業界ではこのようにしてできた基準に対して
「基準に適合してます!!凄いでしょ!!」
という宣伝広告が跡を絶ちません。

これは私が知っている3つ4つの団体に限定されることではないと思います。例えば国民のメリットを考えれば、ウーバーや、民泊、保育園に関する許認可なんかを見ていてもほぼ同様の問題を感じます・・・

ドイツなんかを見ていると当然ロビー団体が同様の動きをしても
最終的には国民の利益や国の利益が優先される方に基準等が集約されていく感じを強く受けます・・・

今までに何度か書いたことがありますが、
これは一部のロビー団体が直近の安住に安らぐために
「国民全体で薄く、広く貧しさを分けあっている状態」
であると確信しています。

自動車や電化製品のように国際競争にさらされている分野においてはこういうことは少ないようですが、国内だけで完結する分野はほぼ例外なくこの毒に侵されているような気がします。

様々な業界の方がいらっしゃるとおもいますが、どうなんでしょうね?いろんな業界のご意見を聞いてみたい気がします。
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構造基準は厳しくすべきか?

熊本の地震後、建築学会の構造の先生方、及び国交省等で耐震基準を厳しくするかどうか?についてかなり議論がなされているようです。

阪神大震災の後もそのような議論が行われ、2000年に耐震基準が改訂されたのですが、それでもその基準に合致する建物が17棟も倒壊してしまったのは実務者は周知のとおりです。

このときに議論されるのは
「建基法が定める最低基準を引き上げ、ある程度のコスト増を容認するか。安価な住宅を供給する経済合理性を勘案して現行の最低基準は維持するか。木造住宅の耐震性能向上策は、これから我々がどのような社会を目指すかという観点から考える必要がある。」
というところに集約されると思います。

一見確かにごもっともなんですが、個人的には全く納得いかないところがあります。
いつもワンパターンで恐縮ですが、車で考えてみましょう。
大震災というのは交通事故と同様に考えていいと思います。
生涯起こさない人もいるにはいますが、車を運転する限り
(住宅に住み続ける限り)生涯に一度以上は体験する確率が
高いというように捉えてもいいかもしれません。
かなり所得の低い方でも任意保険に入らずに車を運転している人というのはほぼ皆無ではないでしょうか。それは無保険で一度でも人身事故を起こしてしまうと、ほとんどの方がファイナンシャルプラン的に人生が終わってしまうことを知っているからです。

※知人からの指摘で無保険の方が結構いるということが判明しました。https://www.sonpo.or.jp/…/s…/pdf/index/kanyu_jidosha_ken.pdf

住宅においては耐震等級3以上であれば、倒壊という事態に至ることはまず考えられないというのが、専門家の間での共通見解です。それがひとつの保険です。これで家による死をほぼほぼ免れるわけですから、せいぜい基準を高めるとはいえ30万もあがらないことですから、それで家族の命が守られるとしたら誰ひとりとして高いとは思わないはずです。
これが義務化になれば、今後建てられる方に関しては命の心配、そして倒壊によるファイナンシャルプラン上の破産の恐れもなくなります。

しかし、これが無理なのであれば、そうでない方は地震保険に入るか、倒壊したときに新たに住むところを確保できるだけの貯金をしておくということが必要になります。
阪神、東日本、熊本のいずれもそうですが、このどちらの準備もしていないままに自宅が倒壊してしまった方のその後の人生は困難を極めているはずです・・・

もう少し深入りして考えると地震保険には様々な免責事項があります。さらに本当に南海トラフ地震が連動した場合に、はたして保険会社が本当に支払えるだけの余力があるのか??みたいなことまで気にかからないでもありません。
もうひとつ気になるところが専門家の間で
「公共建築物の基準は避難場所でもあることから住宅より厳しくあるべきだ」
みたいな議論がよく聞かれるところです。

一見もっともらしく聞こえますが、私には単純に納得できないところがあります。まず、時間的な確率、自宅にいる時間の方が長い人が多いということ。そしてファイナンシャルプランで考えた場合、公共建築物が壊れて直接的被害を被る人はいませんが、個人住宅の場合、破産を意味します・・・

先程も書きましたが「経済的合理性」みたいなことを語る場合に等級3を義務化しても若干壁量と鉄筋量が増えて、プランの制約が少し増えるくらいの話です。金額もせいぜい30万アップまででしょう。生涯における地震保険を払い続けるコストよりもはるかに安いと思います。

このように考えると、耐震基準をあげないという選択肢は経済的合理性の観点からもありえないと思うのです。
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「気密」と「車のボディ剛性」には面白い共通点がある。

「気密」と「車のボディ剛性」には面白い共通点がある。

ほんの10年ぐらい前までは住宅業界では
「高気密は危ない。中気密がいい」という意見が
住宅評論家まで含めても結構な比率を占めていました。
高気密のほうが正しいことは熱環境の専門家の間では常識でしたが
工務店や設計者といった実務者の間では主流にはなりえなかったのです。
それが今では化石や、霊感商法のようなことをやっている実務者を除けば、高気密のほうが主流派になりました。これはこれで非常に時間はかかりましたが、良いことに違いはありません。

なぜこれが全く分野の異なる「車のボディ剛性」に似ているのか?
小1から車の本を読んでいるのでクルマ本歴30年の自分として語らせてもらいます・・・・
10年位前まで結構な数の評論家が「ボディ剛性は強いほうが良い。でもあまり強すぎるのは良くない」みたいなことをいう方が結構いらっしゃいました。でも今の主流の考え方は「ボディ剛性は強ければ強いほど良い」というふうに確実に変わっています。昔から真理は変わっていないのですが、イメージだけで判断する評論家がそれだけ多かったということです。
「ボディがきちんと固まってこそ、サスペンションがしなやかに計算どおりに動くことで性能を発揮する」これが正しい理論です。

これは
「高気密がきちんとできてこそ、換気がきっちりと行われる」
という図式ともピッタリ一致します。
自動車も、住宅も売れるか売れないかはデザインが占める比率が高いのは今も昔も同じです。しかしながら、両方共デザインだけで良し悪しが決まるものではありません。デザインの前に工学的ないしずえがあるものです。業界が成熟する前はいい加減なイメージ先行でエンジニアリングが未熟な理論が業界内に跋扈します。

住宅業界はドイツに比べると断熱に関してはちょうど30年くらい遅れています。車に関しても最近でこそかなりドイツ車のボディ剛性、乗り心地に近づいてきたと言われていますが、ほんの10年ほど前まではかなり差をつけられていました。工学的に大局をおさえておく・・・これは絵画や音楽ではない建築ならではの特性ではないかと思います。
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なんともいえない気持ち悪さを感じました・・・

なんともいえない気持ち悪さを感じました・・・

昨日枚方T-siteに行った際、ちょうど本屋の階に住宅特集が置いてあったので
久しぶりに購入しました。

というのも知り合いの作品が沢山でている「環境住宅新時代」
という特集だったからです。
伊礼さん、みかんぐみの竹内さん、モルクスの佐藤さん
元東大の前研究室にいらっしゃった高瀬さん等々です。

まずはこれらの作品から順にじっくりと拝読しました。
これらの作品については何ら違和感がありませんでした。
逆に「さすがだなあ」と思わせるところがたくさんありました。

その他の作品にもいいと思うものもありましたが、幾つかの作品に
おいてかなりの気持ち悪さを感じました。それは以下の様な理由です。

・ものすごく複雑なシミュレーションをしました・・・
・非常に手間のかかる装置をつけてみました。
・とりあえず冬至と夏至の線をかいておきました
・省エネ基準に関してはポエムではぐらかしてみました

というだけのように感じられる作品紹介がそれなりにあったからです。
これだけ熱環境にこだわって20年近くやっていると
その建物の立地(地域)、隣家の状況、平面図、方位、断熱仕様が
わかればどの程度の省エネ、温熱環境が実現できるのか?また一定の暖かさを
得るためにはどの程度の暖冷房費がかかるのか?ということをそれなりの
精度で推測できるようになります。

気持ち悪さを感じた物件というのはものすごく、手間、お金、理屈が
並べられているのに、明らかに結果が伴わないことが見て取れるからです。

住宅特集といえば、住宅建築家であれば一度は掲載を夢見る最高峰の
住宅雑誌だと思います。正直住宅特集の住宅に環境性能などを求める事自体が
無粋とさえ思えます。

しかしながら、「環境住宅新時代」と銘打つのであれば、このような紙面には
してほしくなかったと思いました。これがもし全物件、国のウェブプログラムで
同条件の計算結果が掲載されていたらまだ納得出来たと思います。

それがなかったとしても、大半の物件において、結果が伴っていたとしたら
それでも納得することができました。しかしながら、どちらも実現されていません。

こういうことをやるのであれば、従来通り「デザインよければすべて良し」という方向性で
やってくれればこのような気持ち悪さを感じることはなかったであろうと思いました。

今、自動車業界では三菱自動車、スズキによる燃費計測方法不正問題で賑わっています。
しかしながら、住宅業界では平均的に自動車の3倍のエネルギーを喰らい、3倍以上の期間
使い続けられるにも関わらず燃費表示そのものがありませんでした。ようやく国のウェブ
プログラムが唯一の共通指標になろうとしています。

そのことに対して「それだけでは測れない価値のようなものが無視されるのはよくないことだ」
という論調もよくみかけられます。たしかに省エネ、温熱に関すること以外であればそんな
ことがたくさんあるのは百も承知です。しかし、車で考えてみてください。

ジウジアーロやピニンファリーナといったデザイナー(デザイン会社)が、「JC08では測れない
燃費の味ってものがあるんです」と言ってるのに近いものが有ります。意匠系で有名な建築家
には小説家顔負けのような難解でかっこ良く見える文章を書かれる方がたくさんいらっしゃいます。
よくよく読んでみると燃費規制に乗らないために、はぐらかすだけの文章だったりする例を
何度も見てきました。今回の特集号、かなり本格的に熱環境工学を勉強している人でなければ
読めば読むほど省エネ住宅というものが分からなくなってしまうと思います。それも気持ち悪さ
を感じた原因のひとつです。

このような例を見ると、簡略化されすぎているだの、基準レベルが低すぎるだの、高すぎるだの
いろんな意見はありますが、国のウェブプログラムで計算した結果を一律で表示することの
意義は非常に大きいということを改めて実感しました。

一般の方はもちろん、プロの建築士でも上述のように諸条件を見ただけで結果を推測できる人
はほとんどいないはずです。であればこそ、メディアが環境特集をやる際は共通の指標での
提示が必須であると思いました。その上で共通の指標で拾いきれないポイントに関しては独自
計算にて結果を補足すれば良いと思うのです。その際の注意ポイントは過程も重要ですが
「それをやった結果何GJ減るのか?」もしくは「光熱費が何円抑えられるのか?」ということです。

そうでなければ、意味のないなんちゃってエコ対策にお施主様の貴重な予算が
割かれてしまうからです。自宅の設計であればいいですが、試作できない建築の世界で
その人が一生住むであろう住宅での人体実験は本当に痛々しく思えてなりません。

最後にもうひとつ感じたことがありました。自分はやっぱり「トータルで経済的な住宅を一人
でも多くの方に届けたいんだ」ということでした。究極の「作品」を作って住宅特集に載る
ことに特段の執着を感じません。しかしながら、2000万円台でサラリーマンが頑張れば
買えるような「健康で快適な省エネ住宅」をその予算の範囲でできるだけ綺麗にデザイン
してたくさんの方に普及させる。そうすることで一人でも多くの方が住宅にまつわる失敗を
することがないようにする・・・。

私のモチベーションの原点はそこにあるということを今回の
紙面を見ていて改めて感じました。これをやるにはどの部材、設計がどれだけ性能に
影響するのかということを端から端まで理解しておく必要があります。私はそこに面白さ
を感じます。「予算無制限で最高の料理を作るよりも、500円の予算でできるだけうまい
ものを作ってやる!」そんな感じです。(もちろん予算が大いに越したことはありませんが・・・)
それが原点であるからこそ、毎回特異な形状をひねり出す必要がありません。

「お施主様の要望と、太陽に素直に設計し、それをデザイン的に整える」これが私の
設計手法ですが、今後共この設計手法が変わっていくことはないでしょう。

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